はじめまして。九州の某TV局でアナウンサーをしていました、高木みなみ(仮名)です。今回は、私がTV局アナウンサー採用試験に合格して内定をもらえた方法や勝因について、体験談をお伝えしたいと思います!受験するために必要な資格や特技なども!少しでもアナウンサーを目指す皆さんの参考になれたら嬉しいです。
審査員が考える「アナウンサーとしての人間力」って何?
アナウンサーと聞いて何を想像しますか?華やかさですか?有名大学を出ていることでしょうか?もちろんこの2点を兼ねたアナも沢山いますが、私を含めて合格した顔ぶれを見ると、その2点ではない別の共通点を感じます。それは「人の心を変えるきっかけになる話題は、この子を通して伝えてもらいたい」と思われる要素があるか、おそらくこの1点に尽きます。プロデューサー達はこの要素を端的に「人間力」と呼んでいます。
アナウンサーの立場を理解して受験する
私達が見ているTV番組には必ずストーリーがありますよね?ユニークな出来事、美味しい料理の作り方、悲しい事件、児童が楽しめる話題・・・これらの番組全てにストーリーがあるのです。視聴者がこれらのストーリーを見て「納得!」と思ってくれるような橋渡し役、それが番組を進行するアナウンサーではないか、と思うのです。私は、この点を常に意識しながら、アナウンサー試験の書類審査やオーディションに臨みました。
「会ってみるか」と思わせる書類作り
まず書類審査で「とりあえず会ってみるか」と思ってもらえる内容にしておかないと面接に進めませんので、私は良い書類を作るために年月をかけました。例えば、私がやったのは外国で変わった資格を取ることです。お酒が好きなので(笑)、2週間で取れる外国のバーテンダー免許を取りに行き、資格欄に「バーテンダーの資格有り(○○国バーテンダー協会正会員)と書きました。凡人の私が何百倍ものアナウンサー採用試験を突破して内定を勝ち取るには、それくらいしておかないと無理!と思ったのです。
資格に関連した特技を身につける
そして、資格は特技として見られるので、その資格に関連する特技を身につけることにしました。一旦、視聴者目線で自分の資格を見ると、次に何をしたら良いか自ずとアイデアが沸いてきます。バーテンダー免許保持者なら「お酒に合う料理を作れるアナウンサーがいたら楽しいだろうな。」「誰でも短時間で作れる料理のほうが、視聴者としてはありがたいだろうな。」とアイデアが浮かびます。ですから視聴者目線で毎日家でいろんな料理を作り、その中で「これぞ!」と思えるレシピを完成させました。自分で作ると、作り方を人に伝えやすくなります。「ここがコツなんです!」みたいな実感を込めて伝えられるので、聞く側は「納得!」となります。書類の特技欄には「各カクテルに合う小料理を15分で作れること」と書きました。
スナップ写真を個性的に統一
そして、もちろんこの資格や特技を表すワンシーンを写真に収め、書類審査の必須項目でもある「スナップ写真」に活かします。スナップ写真は頑張りましょう。できれば写真の上手い友人や、セミプロのような人をSNSで探して撮影してもらうと良いです。TV局員は映像のプロですから、あまりに完璧に仕上げられた写真は逆に不信感を買うこともあります。「写真を勉強しています」くらいの人に撮影してもらうのが良いかもしれません。ちなみに、他局のアナウンサー採用試験に合格した友人は「心も体も柔軟です。」と自己PRし、レオタードでY字開脚するスナップ写真を送っていました!TV局は映像の世界ですから、インパクトのあるスナップ写真を提出する候補者は何かと目に留まります。私の場合、資格欄と特技欄に書いた内容、そしてスナップ写真がとても功を奏し、実際に毎回オーディションで「バーテンなの?」「では僕をイメージしたカクテルと、それに合う料理について話してみて。」と聞かれ続けました。採用試験の審査員に質問を浮かばせる、つまり、質問するためにオーディション会場に呼びたくなるような候補者に、自分で自分を作り上げていくのです。そんな意識でいると、自ずと毎日の生活がクリエイティブな準備期間に変わっていきます。前向きに過ごす時間は楽しいですよ。
ニュース表現を真似る
さて、飲食がテーマだけでは柔らかい印象に終始してしまうので、硬派なものはとても硬派に対応できるよう、これまた自分で研究していました。私はアナウンサーの採用試験に合格するために、毎日1本ニュース記事を読み、その感想を新聞のコラム欄にあるような硬派な表現方法で書き、最後に放送原稿に仕上げる、という一連のセットで練習をしていました。最初の頃はとりとめもない文章になってしまっても、毎日続けていると上手くなっていきます。先にコラムを読み、次にそのコラムがテーマにしているニュースを読み、そしてまたコラムに戻ってひたすら同じ文章を自分のシャーペンと紙を使って書き真似る、という方法も効果的です。プロの編集長レベルの人が書く文章、構成、目の付けどころが、じんわりと自分に吸収されていき、他のテーマが突然出されてもきちんと対応できるようになります。そして、同じテーマのニュースを、TVやラジオの放送ニュース原稿に自分で書き換えていきます。新聞で扱われているような有名なニュースであれば、当然TVなどでも取り上げられているはずです。何千文字も使って表現する紙面ニュースをTVの世界ではどう短縮して伝え、コメントを作っているのか。一度ニュース番組のキャプションを出して見て、そのキャプションを自分でタイピングしていくと、頭に入ってきやすくなるでしょう。
実際のオーディション
アナウンサーはたまに、自分でこのようにニュース原稿を作成させられることがあります。オーディションで実際に「今から新聞記事を配るので、それを読んで1分間のニュース原稿にして、カメラの前でアナウンスしてください。最後に自分のコメントも発言してください。」というお題をもらったことがあります。アナウンサー業務の実情に即した、採用試験のオーディションだったといえます。普段から自分でもやっておくと、こういう時に強いでしょう。
アナウンサー訓練学校に短期通学
あとは、それなりに合格者を出しているアナウンサー受験学校にオーディション前の半年だけ通いました。クラスメイト達の中に「今週内定を貰いました!」という子が必ず出てきます。受かる子のレベルが肌感覚で、しかも客観的に分かってきます。その子の良い部分を自分にも取り入れ自分の人間力を高めるためにも、アナウンサー受験学校への通学はオススメです。もちろん、原稿を読むのが上手くなるとか、自己PRを徹底的に訓練できるようになるなどの利点もあります。どうにか通学費を捻出しましょう。
結局、欲しがられる候補者はこんな人
こうして書いていると、アナウンサー採用試験に受かるには大学の知名度などサッパリ意味がなく、人間力、対応力、思考力、表現力を総合的に見られた結果「この子にストーリーテラーの役割を託そう。」と思ってもらえるかどうか、しかも数百倍を勝ち抜けるだけのこうした要素を最終オーディションまでブレずに保てたか、に尽きる気がします。実際にいざTV局に入社できても、アナウンサーは結局のところ仕事を「貰う側」。入社後も延々と「このストーリーを伝えてほしいアナは・・・この番組ならこのアナだ。」というふうにジャッジされ続ける、楽しくも厳しい世界に身をおくことになります。自分で出演番組を選べません。たった年1回の書類審査やオーディションで審査員に対して「自分なら御社のこの番組などでストーリーテーラーができる要素がありますよ。」というのを、しっかりと表現できるようにしましょう。口で説得しても審査員は納得しません。書類で、オーディションで、あらゆる面でそれを「感じ取ってもらう」のです。たった年1回のチャンスでそれをやって数百倍を勝ち抜け!なんて宝くじに当たるような無茶振りだ、と言う人も多いのですが、そもそも生放送はたった1回しかない取り返しの付かない環境です。プロのアナウンサーはそれを毎回番組でやってのけています。やるしかないんです。未来のそのポジションを狙うのがアナウンサー受験なので、ぜひこのことを念頭に、準備してみてください。このような方法で採用試験に合格し、内定を勝ち取りましょう。新人アナウンサーになったあとも、練習や苦労があります。