はじめまして。九州の某TV局でアナウンサーをしていました、高木みなみ(仮名)です。今回は私が晴れてテレビ局アナウンサー試験に受かり、入社した1年目の練習や訓練、、苦労、努力などについて情報をシェアします。少しでもアナウンサーを目指す皆さんの参考になれたら嬉しいです。
ゆっくり食事をする時間もない毎日
新人や若手アナウンサーに限らず記者もそうなのですが、忙しくて、ゆっくりする時間がないです。それは、なにしろ仕事が激務だからです。まず、ゆっくりと食事をできないです。また、食べる「場所」も限られます。24時間いつでも電話が通じる場所にいなさい、という意味から、地下で食事してはいけないと言うのです。もし地下のレストランでゆっくり食事などしようものなら、若手アナウンサー達は「仕事に真摯に取り組んでいない。」と先輩から言われますし、特に報道記者達は上司やディレクターから烈火のごとく叱られます。地下にある隠れ家的なお店でデート…なんて夢のまた夢。早く数年経って「夜中の電話は後輩に。」と言える立場になりたいなあ、なんてひそかに思ったりもしました。そして、住む場所です。これも激務前提の仕事だからこそなのですが、「局から出勤連絡が入ったり、地震や自然災害が発生したら30分以内に局に到着しなさい。」というルールから、どうしても局のある都心部に住む必要がありました。私の勤務地は風光明媚な海が魅力的な県。海沿いに住もう!とワクワクして赴任したのですが、その夢が一気に打ち砕かれてしまいました。地震速報が携帯に入るたびに「まーたー出勤だわー!!(涙)」とせっかくのデートも終了に。これ、けっこう大変な苦労ですよ。
朝から腹筋、早口言葉、発声練習トータル1時間の努力
眠っている時はそれなりに内臓も休んでいるので、起きてすぐに横隔膜や肺やらを動かしまくり発声練習をするというのは結構大変な努力です。でも新人や若手アナウンサーはまだ発声が安定していないうえに、任される仕事の量や質も先輩達に比べると大したことがないので、レギュラー番組を持っていない若手が業務時間にやることと言えば、真っ先に発声練習が挙がります。そのうちに、先輩達が忙しい時間に営業部から「クライアントのCMナレーションを今すぐ吹き込んでほしい。」などとリクエストされます。そこが勝負の瞬間!自分のCMアナウンスは上手かったか、まだまだなのか、先輩やディレクターが冷静に判断します。まあ、ちょっとしたオーディションです。それで「あ、この子上手いじゃん。」と思ってくれれば、その安心感から後で別番組に起用されることも大いに有り得ます。その一瞬のチャンスのためにも腹筋、早口言葉、発声練習を毎日こなすんです。でも、就寝中にぐっすりと休んでいた内蔵機能を一気に動かし続けるのって、やっぱり慣れるまでは本当に大変な努力です…。
リズム感を養うため、ダンスの研修とトレーニング
アナウンサーって原稿を読む仕事だと思っていたのですが、まさかのダンス研修に行かされました(放送局によるかもしれません)。理由がちゃんとあって、秒単位でアナウンスを上手く切り上げるためのリズム感やテンポを養うのが目的です。しかも、系列局の同期アナウンサー達全員が集められるため、北は北海道から南は沖縄まで一同に会し、このダンスレッスンに呼ばれ、みんなで踊りまくります。リズム感を養うために、トレーニングと努力が必要です。
録画をモニターされダメ出しされ続ける
少しずつ、短いニュースを読む機会などを貰うようになるのですが、スタジオで頑張った後は、先輩やディレクターと一緒にその録画を見て延々とダメ出しされ続けます。再生ボタンを押し、冒頭の「こんにちは。」を聞いた直後、はい、一時停止されダメ出し。「もっとお年寄りや子供にも伝わるような『こんにちは』を言わないとダメじゃないか。」…こういう感性的な指摘って、最初はよく分からないのです。そして「カメラからやや下の目選で話すようにして。」「アイシャドーは別の色にしよう。」などと、結構細かく評価され続けます。TVカメラに映り続けてもOKなように、自分自身をカスタマイズしきれるまで、全く気が抜けず、大変な苦労です。
ニュースをチェックし続ける
突然先輩やディレクターに時事ネタを振られ、きちんと答えられる後輩と答えられない後輩。あなたが先輩だったらどちらを「努力しているのね!」と認めたくなりますか?もちろん、答えられる後輩でしょう。そもそも多くのニュースを読み漁るうちに、一般的な感覚を得ることができますから、やはり多くの人に物事を伝える立場としては一般的な感覚を身に付けたほうが良いです。世間一般の感覚からズレた人が、公共の電波で言ってはならない一言を言うと、それは放送事故になってしまいますから…。自分をより良いアナウンサーにするためにも、私は新人や若手時代だからこそニュースを欠かさずチェックしていました。
結局、新人や若手は休む暇なく努力が必要
他にもまだ新人や若手アナウンサーがやるべきことは沢山あります。こうして列挙してみると、あの頃は本当に24時間休む暇が無かったなと思います。TVで話す一瞬のタイミングのために、他のあらゆる時間を過ごしてきたと言っても過言ではありません。でも、そうやって一瞬一瞬を生きる日々って本当に生き生きしていました。華やかに見えて結構苦労や努力をしている…それが新人や若手アナウンサー時代です。採用試験に合格して、テレビ局のアナウンサーになるには、大変な努力が必要です。